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軽度発達障害フォーラム
視覚と学習障害

  商品紹介
エンジョイジオボード
 制作: 大阪医科大学LDセンター    奥村 智人
 開発・販売:理学館



 読字、書字に必要な「形を把握する力」

■ 簡単な模写課題

  幼児の発達をみるのに次のような課題があります。
 筆記用具を用意して、下の図形を模写するように指示します。


大人の多くは次のように書くでしょう。 書き順に注目してください。

しかし、3、4歳のころは、こんな風に書いたりする子がいます。

  彼らは間違っていません。このことは重要です。この形を模写する場合の書き順は何通りもあって、彼らはその一つを選んだのです。しかし、普通の大人とは違う書き順です。なぜ、彼らの書き順は大人と違うのでしょうか。

■ プレグナンツの法則

彼らの書き順は彼らの形の見え方と強い関係がありあます。 
人は形を見るとき、まず、まとまりのよいかたちとして捉えようとします。複数のまとまりの知覚が可能な視覚刺激が与えられた場合、最も簡潔で秩序ある形を知覚する傾向があることをヴェルトハイマー(1880-1943)が見出しました。これはプレグナンツ(よい形態)の法則とばれています。以下に代表的なよい形の要因を説明します。
 

近接の要因 (factor of proximity)

黒い正方形が縦方向に3列並んでいるように感じるはずです。近接の要因とは、近くにあるものがまとまりとして 知覚されるという規則です。


類同の要因 (factor of similarity)

黒い正方形と丸が縦方向にそれぞれ2列並んでいるように感じるはずです。似たものどうしが、まとまりとして 知覚されます。


連続の要因 (factor of good continuation)

1本の直線と1本の曲線と見えるはずです。 滑らかな経過またはよい連続を示すものはまとまって知覚されます。


閉合の要因 (factor of closure)

  ] [ の連続ではなく、 [ ] の連続に見えませんか。 閉じた形と、開いた形では、閉じた形が優先されて知覚されます。


  上記の課題は「連続の要因」で説明することができます。大人の多くがかたちを解釈するとき、このプレグナンツの法則にしたがっています。この法則を実現する機能をちょっと格好良く「ゲシュタルトを成立させる視知覚」とよんでみましょう。
       

■ たとえば「田」という漢字

   先ほどの「十」よりもう少し複雑な「田」という漢字について考えてみましょう。
  
   
  
この漢字はどのようなまとまりとして感じますか。

 口が縦横2行2列  口と十が重なったかたち  縦棒3本と横棒3本

などがあるでしょう。(プレグナンツの法則はすべての人に共通する絶対的な規則ではありません。何を「よいかたち」とするかは個人の育った生活環境の影響を受けると考えられています。)
  一般的に、私たちは漢字を憶えるとき、かたちをより小さな単位の形に分解して抽象化(言語化)し、それを構成要素として再構成します(極端な例として、熊 = ム月ヒヒ、、、、)。しかし、ゲシュタルトを成立させる視知覚能力が未発達であった場合、このような分解ができません。漢字が苦手な児童には「田」はこんな風に見えているかもしれません。
   

 このようなかたちを記憶することはたいへん困難です。

  視知覚能力が未発達であった場合、学習、運動、日常生活に困難をもつことになります。特に、「読字」、「書字」に顕著にあらわれます。ただし、「読字」、「書字」に困難をもつからといって、すべての原因が視知覚にあるわけではありません。

■ 視知覚能力をトレーニングする

  視知覚能力は個人差はありますが発達とともに向上します。また、トレーニングが有効であると考えられています。
理学館では、視知覚をトレーニングする「特別支援教育用教材 エンジョイジオボード」を販売していますが、以下のようなトレーニングも簡便で有効であると考えています。

タングラム

見本のシルエット(影絵)を、ピースを組み合わせる事により完成させる遊びです。 図形の構成力を養います。玩具店や大きな書店で購入できます。100円均一の店にもありました。(100円〜2,500円)
視知覚の苦手な児童にとって、一般的に販売されているものは難易度が高いので、できるだけ簡単なものから始めたほうがいいでしょう。

ペグボード

色のついた長さの違うペグをボードに差し込む遊びです。
数の概念の基礎となるグループ化する力を養います。また、かたちだけでなく、色や長さ、そして、指先を上手に使う能力、目と手の協応などがトレーニングできます。
大きな玩具店で購入できます。


ジグソーパズル

  定番の教育玩具です。絵や写真の背景を見ながらピースを合わせることで、形を把握する力を養います。児童が興味を持たないようでしたら、難易度が高すぎるのかも知れません。もっと簡単なものを用意してください。



 トレーニング一般に言えることですが、児童は能力を超えることを求められると、トレーニングそのものが嫌いになってしまいます。まずは、「簡単すぎる」ぐらいから始められることをお勧めします。



<このページの参考文献>
MIND HACKS Tom Stafford, Matt Webb 著 夏目 大 訳

このページの文章の責任は理学館の川端にあります


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